【いわゆる「制限規定」に関する判例】
・パロディ・モンタージュ写真事件(最判昭和55年3月28日、判時967号45頁)
パロディ・モンタージュ写真を作成する際に、他者の写真を利用することが引用に当たるかが争われた事件であるが、最高裁は、「引用に当たると言うためには、引用を含む著作物の表現形式上、引用して利用する側の著作物と、引用されて利用される側の著作物とを明瞭に区別して認識することができ、かつ、右両著作物の間に前者が主、後者が従の関係があると認められる場合でなければならないというべきであり、更に、「引用される側の著作物の著作者人格権を侵害するような態様でする引用は許されない」と判示した。
・脱ゴーマニズム宣言引用事件(東京高裁平成12年4月25日)
漫画の引用が認められるかどうかが争われた事件であるが、東京高裁は、「控訴人書籍が「意見主張漫画」として、漫画という表現形式によって意見を表現したものであり、被控訴人書籍は、右意見に対する批評、批判、反論を目的とするものであること、及び、被控訴人書籍に引用された控訴人カットは、控訴人漫画のごく一部にすぎず、右批評、批判、反論に必要な限度を超えて、控訴人漫画の魅力を取り込んでいるものとは認められないことを考慮すれば、被控訴人書籍においては、被控訴人論説が主、控訴人カットが従という関係が成立しているというべきである」として引用の要件のうち、主従関係については問題ないとしたものの、「カット37の右改変は、控訴人が控訴人書籍において有する同一性保持権を侵害したものというべき」と判示し、「弁論の全趣旨によれば、被控訴人らの右著作者人格権侵害の行為は、少なくとも被控訴人らの過失によるものであること、及び、控訴人が、被控訴人らの右行為によって精神的苦痛を受けたことが認められる」として、カット37を含む被控訴人書籍の出版、発行、販売、頒布の差止め及び慰謝料の支払いを命じたものである。