【ソフトウェア著作権に関する判決】
・システムサイエンス事件(東京高決平成元年6月20日、判時1322号138頁)
プログラムの無断複製に関し、プログラムの創作性が争われた事件であるが、東京高裁は、プログラム著作物の著作権侵害の要件として、創作性とその後に作成されたプログラムが元のプログラムの創作性を認め得る部分に類似していることが必要とし、「プログラムはこれを表現する記号が極めて限定され、その体系(文法)も厳格であるから、電子計算機を機能させてより効果的に一の結果を得ることを企画すれば、指令の組み合わせが必然的に類似することを免れない部分が少なくないものである。したがって、プログラム著作物についての著作権侵害の認定は慎重になされなければならない」との判断を示した。
・IBFファイル事件(東京高決平成4年3月31日、知裁集24巻1号218頁)
市販のアプリケーションソフトをハードディスクに組み込むための指示や情報を記述したファイルがプログラムの著作物に該当するか否かが争われた事件であるが、東京高裁は、プログラムとは、電子計算機に対する指令の組み合わせであり、それにより電子計算機を作動させ一定の処理をさせるものでなければならないとし、さらに、創作性を有するものが「プログラムの著作物」として著作権法上の保護を受ける。電子ファイルであっても、上記機能を有しないものはプログラムとはならない。プログラムを稼働させ一定の処理をさせるためには、そのプログラムの他、それに処理情報を与えるデータが必要であるが、上記データを本体プログラムとは別個のファイルに記録させる場合、そのファイルは、電子計算機に対する指令の組み合わせを含むものではないので、著作権法上のプログラムではないとして当該データファイルの著作物性を否定した。