【翻案権等に関する判例】
・どこまでも行こうvs記念樹事件(東京高判平成14年9月6日、判時1794号3頁)
音楽の著作物の複製権・編曲権侵害が争われた事件。楽曲の本質的同一性の判断基準について、東京高裁は、「楽曲の本質的な特徴を基礎付ける要素は多様なものであって、その同一性の判断手法を一律に論ずることができないことは前示のとおりであるにせよ、少なくとも旋律を有する通常の楽曲に関する限り、著作権法上の「編曲」の成否の判断において、相対的に重視されるべき要素として主要な地位を占めるのは、旋律であると解するのが相当である」と判示した。
・NHKナレーション事件(最高裁平成13年6月28日、判時1754号144頁)
江差追分に関する書籍の著作権者が、テレビ番組を放送したNHKに対して、当該番組のナレーションが本件書籍のプロローグの翻案に当たると主張した事件であるが、最高裁は、「言語の著作物の翻案(著作権法27条)とは、既存の著作物に依拠し、かつ、その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ、具体的表現に修正、増減、変更等を加えて、新たに思想又は感情を創作的に表現することにより、これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為をいう」と判示し、「本件ナレーションは、本件著作物に依拠して創作されたものであるが、本件プロローグと同一性を有する部分は、表現それ自体ではない部分又は表現上の創作性がない部分であって、本件ナレーションの表現から本件プロローグの表現上の本質的な特徴を直接感得することはできないから、本件プロローグを翻案したものとはいえない」と判示した。