【著作者人格権(同一性保持権)に関する判例】
・ときめきメモリアル事件(最判平成13年2月13日、判時1740号78頁)
ゲームソフトにおいて、著作者の想定していない主人公(プレイヤー)のパラメーターを記録したメモリーカードを輸入販売したことが同一性保持権を侵害するか否かが争われた事件であるが、最高裁は、「本件ゲームソフトにおけるパラメータは、それによって主人公の人物像を表現するものであり、その変化に応じてストーリーが展開されるものであるところ、本件メモリーカードの使用によって、本件ゲームソフトにおいて設定されたパラメータによって表現される主人公の人物像が改変されるとともに、その結果、本件ゲームソフトのストーリーが本来予定されていた範囲を超えて展開され、ストーリーの改変をもたらすことになるから」、本件メモリーカードの使用は、本件ゲームソフトを改変し、同一性保持権を侵害するとした。そして、「専ら本件ゲームソフトの改変のみを目的とする本件メモリーカードを輸入、販売し、他人の使用を意図して流通に置いた」業者について、他人の使用による本件ゲームソフトの同一性保持権の侵害を惹起したものとして、不法行為に基づく損害賠償責任を認めた。
・ときめきメモリアル同人ビデオ事件(東京地判平成11年8月30日、判時1696号145頁)
ゲームソフト「ときめきメモリアル」の主役キャラクター「藤崎詩織」を無断使用して同人のアダルトアニメビデオを制作販売した事件であるが、東京地裁は、ビデオに登場する女子高校生の図柄は、容貌、髪型、制服等の特徴が藤崎詩織と共通しているので、藤崎詩織の図柄と実質的に同一のものであり、藤崎詩織の図柄を複製ないし翻案したものであるとして著作権侵害を認めた。また、女子高生と藤崎詩織の特徴の共通性から、ビデオの購入者は、ビデオにおける女子高校生を藤崎詩織であると認識し、本ビデオは、藤崎詩織の図柄を性行為を行う姿に改変している(この改変は、藤崎詩織の「性格付けに対する創作意図ないし目的を著しくゆがめる、極めて悪質な行為である)として、同一性保持権侵害を認めた。