【著作権侵害に関する判例】
・ワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー事件(最判昭和53年9月7日、判時906号38頁)
被告の作曲した楽曲が原告が著作権を有する楽曲を改作したものとして著作権侵害が争われた事件であるが、最高裁は、「著作物の複製とは、既存の著作物に依拠し、その内容及び形式を覚知させるに足りるものを再製することをいうと解すべきであるから、既存の著作物と同一性のある作品が作成されても、それが既存の著作物に依拠して再製されたものでないときは、その複製をしたことにはあたらず、著作権侵害の問題を生ずる余地はないところ、既存の著作物に接する機会がなく、従って、その存在、内容を知らなかったものは、これを知らなかったことにつき過失があると否とにかかわらず、既存の著作物に依拠した作品を再製するに由ないものであるから、既存の著作物と同一性のある作品を作成しても、これにより著作権侵害の責に任じなければならないものではない。」とし、楽曲の偶然の一致は著作権侵害にならないと判示した。
・「ぼくのスカート」事件(東京地裁平成6年3月23日)
被告が作成したテレビドラマの脚本とこれをもとに放映したテレビ番組が原告が創作したラジオドラマの著作権を侵害したかどうかが争われた事件であるが、東京地裁は、「「翻案」とは、翻訳、編曲、変形、脚色又は映画化と同じように、いずれか一方の作品に接したときに、接した当該作品のストーリーやメロディ等の基本的な内容と、他方の作品のそれとの同一性に思い至る程度の当該著作物の基本的な内容が同一であることを要するというべきであり、また、本件のようなドラマやその脚本においては、主題、ストーリーや、作品の性格等の基本的な内容が類似することを要するというべきところ、本件においては、右認定のようなストーリーの相違、主題又は作者の意図の違い等を総合すると、原告脚本と被告ら作品は、基本的な内容において類似しているとは認められない」と判示し、原告の請求を棄却したものである。