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2009年06月03日

日本における債務整理

つい先日、アメリカ最大手の自動車会社であり、世界最大の自動車会社であるゼネラルモータース(以下GM)が連邦破産法11条の適用を申請したというニュースが世界中を飛び交いました。
もともと予想されていた事態だけに、市場の反応は予想以上に冷静でしたが、予想していたこととはいえ、大きな衝撃とともにこのニュースを受け止めた人も多くいたはずです。今回は、日本において、経営破綻した会社や借金の返済に苦しむ人が、どのような法的手続きのもと、債務を整理していくのかを紹介します。


まず、会社も人(自然人)も法的な手段をとらず、任意に債権者と交渉して、債務を整理する方法があります。いわゆる任意整理というもので、GMが連邦破産法の申請前に社債権者に社債を株式と交換してくれるよう交渉していたのもこの任意整理の手段の一つです(社債は借金ですので、期限が来れば利子をつけて返さなければなりませんが、株式の場合、株式の種類にもよりますが、会社に利益がなければ配当はつけなくても構わず、償還期限もありません)。任意の交渉ですので、何ら法的手続きによることなく、簡便な処理ができますが、あくまで任意の交渉のため、強制力はなく、また一部の債権者が拒否すればまとまらないこととなります。


任意での整理ができない場合には法的な手続きをとることとなりますが、事業活動等による収益の見通しがあり、ある程度債務を圧縮できれば返済が可能である場合には、民事再生の手続きをとることになります。


民事再生手続においては、簡単に説明しますと、法的手続により、債権者及び債権額を調査したうえで、どの程度の債務の圧縮ができれば、今後の債務者の収益や収入に照らして債務者が立ち直れるかを調査し、債務を一定割合で圧縮し、再建計画に従って、残りの債務を返済していくこととなります。

債務者としては、自分の財産を処分することなく、債務を圧縮できる利点がありますが、再建計画に対する審査が厳しく、また、再建計画の実行を怠れば再建計画の取り消しを求められることもあります。
債務者の信用が落ちることで、債権者が取引先であれば、たとえ過去の債務を圧縮できても将来の取引を拒否される恐れもあります。GMも基本的にはこの民事再生の手段によることとなり、債権者は手続きによってしか債権を回収できないこととなり、この点がGMに部品を納入していた会社の大きな悩みとなります。


そして、民事再生の手法もいよいよ不可能となった場合とられるのが、破産による法的整理です。
破産による場合、多くの場合は裁判所に選任された破産管財人のもと、債務者の財産が管理、処分され、債権者とその債権額が把握されます。処分された財産から手続き費用を控除した残額を、各債権者の債権額に応じて配当することで財産的処分を終了し、一方で個人の債務者は免責決定を受けて、晴れて債務がなくなるという運びとなります。
破産法の適用によれば、全債務が免除されるというメリットはありますが、そのためには全財産を処分する必要が生じ、また、資格取得の制限や、数年の間ローンを組んだり、銀行の融資を受けられないといったデメリットもあります。


債務の整理について大まかに説明してきましたが、GMの破綻がさらなる破綻を呼び、今後これらの手段を検討せねばならない企業や個人が増加する、そのような事態は避けたいものです。


(弁護士 武田大輔)