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2009年05月12日

逮捕とは、捜索とは?

2009年4月23日、SMAPの草なぎ剛さんが公然わいせつ罪の容疑で逮捕され、自宅マンションを家宅捜索されましたが、逮捕や捜索とはどのような意味を持つ手続きなのでしょうか。


まず、逮捕から見てみましょう。よくニュースで「犯人が逮捕されました。」と報道されると、逮捕された人イコール実際に罪を犯した人、と思っている人が多いのではないでしょうか。
刑事訴訟法という犯罪捜査、刑事裁判等について定めた法律では、「逮捕」とは、あくまで罪を犯した相当の疑いのある人で、捜査上身柄確保の必要のある人に対して行われる手続きです。実際には、逮捕から勾留へと移行し、さらに捜査が続けられ、起訴するかどうか、つまり刑事裁判にかけるかどうかを検察官が判断し、起訴がなされた場合にはじめて刑事裁判手続きに入り、そこでようやくその人(被告人)が本当に罪を犯したのかどうかを裁判官が判断するという流れになっているのです。


次に、いわゆるガサ入れと呼ばれる「捜索」についてですが、これは犯罪が疑われる事件についての証拠があると疑われる場所に対して、その証拠を発見するための捜査活動です。捜査官がその場所(たとえば自宅)に立ち入って調べられるわけですから、当然プライバシーの侵害となりますので、捜索はその必要性と合理的な理由がないとできません。


ここで、「あれ、変だな。」と思われた方がいらっしゃるのではないでしょうか。
草なぎ氏は公然わいせつの現行犯で逮捕されたのであって、公園で見つかった状態で既に強制わいせつの証拠はそろっていたはずです。とすると、その後の家宅捜索は何の目的と必要性があって?
「覚せい剤とか何も出てこなかったんだから、家宅捜索をやってもらってかえってよかったんじゃあないか。」などという無責任な発言もあったようですが、草なぎ氏の弁護人は、何らかの特別な意図や配慮があったのか、この家宅捜索については何も文句は言わなかったようです。その結果、この家宅捜索についてその必要性と理由が特に大きな問題となることはなく、草なぎ氏も先日起訴猶予処分ということで、事実上今回の事件は不問とされました。が、もし、家宅捜索について草なぎ氏が争っていたら、果たしてどういう展開になっていたのでしょうか?


法律の世界で用いられている言葉は必ずしも、日常生活で思っている言葉とはその意味が異なることがあります。例えば、刑事訴訟法では、刑事裁判において犯罪を犯したと疑われている者を被告人と規定し、実務では「被告人○○」と呼んでいますが、マスコミ報道では、「被告○○」と呼んでいるのが一般的です。また、刑法では、「婦女暴行」という犯罪名称が使われていないこともあり、その事件において、実際にどのような罪(罪名)が問題となっているのか正確に把握する必要もあります。
まずは法律用語や法制度を正確に理解した上で、その事件の本質や背景事情に迫り、さらには適法な捜査が行われたのかどうか、証拠が出てきた捜査過程にも十分な注意を払うことが非常に重要となります。


(弁護士 武田大輔)