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2010年07月21日

請負契約においてリース契約の成立が停止条件ではないとされた事例

「AがCとの間で締結することを予定していたリース契約は,いわゆるファイナンス・リース契約であって,Aに本件システムの代金支払につき金融の便宜を付与することを目的とするものであったことは明らかである。そうすると,たとえ上記リース契約が成立せず,Aが金融の便宜を得ることができなくても,Aは,Bに対する代金支払義務を免れることはないというのが当事者の合理的意思に沿うものというべきである。加えて,上告人は,本件工事の請負代金の支払確保のため,あえて信用のある会社を本件システムに係る取引に介在させることを求め,その結果,被上告人を注文者として本件請負契約が締結されたことをも考慮すると,上告人と被上告人との間においては,AとCとの間でリース契約が締結され,Cが振り出す手形によって請負代金が支払われることが予定されていたとしても,上記リース契約が締結されないことになった場合には,被上告人から請負代金が支払われることが当然予定されていたというべきであって,本件請負契約に基づき本件工事を完成させ,その引渡しを完了したにもかかわらず,この場合には,請負代金を受領できなくなることを上告人が了解していたとは,到底解し難い。
 したがって,本件請負契約の締結に当たり,被上告人が上告人に交付した注文書に前記記載があったとしても,本件請負契約は,AとCとの間で本件システムのリース契約が締結されることを停止条件とするものとはいえず,上記リース契約が締結されないことになった時点で,本件請負契約に基づく請負代金の支払期限が到来すると解するのが相当である。これと異なる原審の判断には,契約当事者の意思解釈についての経験則に反する違法があり,この違法が判決に影響を及ぼすことは明らかである。」

(最高裁平成22年7月20日判決)