TOP | 医療機関における情報管理 »

2007年04月29日

放送と通信の融合

法整備と新しいビジネスモデル確立の課題


 「放送と通信の融合」という言葉が2006年頃から囁かれ始め、今日ではどこでも議論される話題となりました。


 「放送と通信の融合」とは、つまり、放送業界(CATV、衛星波、地上波)と通信業界(固定電話、携帯電話など)とが相互参入し、新たなサービスが進展することで、例えば、その一つの具体化がテレビ番組のインターネット配信である、IPマルチキャスト放送です。


 IPマルチキャスト放送とは、光ファイバーなどブロードバンド(高速大容量)通信網を利用したインターネットを経由して、映像と音声のデータを送り、契約世帯のテレビに映し出すサービスのことを言います。
 セット・トップ・ボックス(STB)と呼ばれる専用チューナーをテレビにつなげて視聴するもので、不特定多数の視聴者が見るこれまでのテレビ放送とは区別されます。また、難視聴地域対策として利用できるほか、チャンネル数に制約がないため、放送が専門化、多様化する可能性があり、既に事業者として4社が登録しています。


 しかしながら、画期的なこれらの新しい融合的サービスの進行は、現行法制度という側面では簡単だとは言えません。                


 例えば、テレビ放送は著作権法上「放送」として扱われますが、IPマルチキャスト放送は「自動公衆送信」(通信)として扱われており、つまり、放送局は、テレビ放送に関しては著作隣接権を持つ歌手・俳優などの実演家やレコード会社などに事前に許諾を得る必要はなく、放送後に使用料を支払うだけでよいのですが、インターネット配信では、事前に実演家やレコード会社などへ個別の了解が必要となり、権利処理の時間と手間がかかる、というように、それぞれの対応する法律が違うため、現状での通信・放送の融合に係る放送法制度の実態を見極め、必要な部分の見直しを検討する事が急務なのです。


 高度情報化が進む昨今、技術論レベルでは、飛躍的に進歩している一方で、法制度面で遅れを取ってしまっている現状は否めませんが、比較的早い段階必ず検討が必要な分野であることは間違いありません。