2020年2月11日

新型コロナウィルスと不可抗力(Force Majeure)条項

 国内取引か、国際取引かを問わず、一般的な企業間取引契約書においては、天災(act of God)、火災(fire)、地震(earthquake)、洪水(flood)などの甚大な自然事象が生じた場合には(ただし、政府の行為、法律の改廃、テロ、戦争等の人為的な第三者による所為の場合も規定されていることも多い)、そのことを原因とする履行遅滞や履行不能について、当該債務の債務者がその遅滞ないし不履行責任を負わなくてもよいとあらかじめ規定しておく不可抗力(Force Majeure)条項が置かれているのが通常です。
 2020年2月11日の日経新聞の報道によると、新型コロナウイルスによる肺炎のまん延を受けて、中国国際貿易促進委員会は、不可抗力に当たる事実が発生したことを示す証明書の発行を始めたということであり、今後、当該債務の遅滞ないし不履行につき、その契約書の規定振りにもよりますが、「不可抗力」によるものと言えるのかどうかが、契約当事者間において法的に問題となりそうです。
 我が国の現行民法においては、故意又は過失により債務を遅滞ないし不履行となった場合には債務不履行責任を負うとされていますが、当該債務の債務者に「過失」があると言えるかどうか、つまり、予見可能性があり、かつ結果回避可能性があったかどうかということが問われることになりますが、それとほぼ同様の観点から「不可抗力」によるものと言えるかどうかが検討されることになりそうです。当該債務の遅滞ないし不履行につき、その時期、場所(地域)、債務の内容、影響を受けた状況、代替手段の有無、インフラの回復状況等諸般の事情が考慮されることになりそうですが、現在の未だ収束を見ない深刻な状況を見る限り、「想像だにできなかったものであり、どうすることもできなかった」と言える場合が多く、「不可抗力」によるものとみなさざるを得ない場合が多いのではないかと推測されます。

Category: Author: 近藤 剛史
近藤総合法律事務所
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