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「人の世を渡る有様を見るに、心に思うよりも案外に悪をなし、心に思うよりも案外に愚を働き、心に企つるよりも案外に功を成さざるものなり」（「学問のすすめ」福沢諭吉）
�供ゥ灰鵐廛薀ぅ▲鵐昂弍弔蓮∋�代の要請
１）ＩＴ社会（情報価値の優位性）
・「第三の波」（Ａ・トフラー）
(1)農業の時代（「国家論」プラトン）
(2)工業の時代（「資本論」カール・マルクス）
(3)情報産業の時代（ネクスト・ソサイアティ）
・人間の発生学的特質（「情報の文明学」梅棹忠夫）
(1)消化器官系を主とする内胚葉（食欲の充足）
(2)筋肉を中心とする中胚葉（肉体労働からの解放）
(3)脳および神経系を中心とする外胚葉（精神産業の時代）
２）パラダイム・シフト
現在、個人情報や営業秘密等に関する情報管理を厳格に行うことが不可欠
３）情報管理を適切に行うための意識改革
・「意識が変われば、考え方が変わる。考え方が変われば、取組み方が変わる。取組み方が変われば、自ずと結果が変わる。」
・医療機関においても、コンプライアンス経営を目指し、意識改革を行っていくためには、いくつもの岩盤を突破しなければならない。
(1)「現状認識拒否の岩盤」 悪い方向、悪い状況になっていることを否定する
(2)「誤った判断の岩盤」 改革する必要はないと安易に考える
(3)「絶望の岩盤」 理屈ではそうだが、実際には無理と思い込む
(4)「実行拒否の岩盤」 指針や計画だけを作って安心してしまう
(5)「継続拒否の岩盤」 改革を持続することを止めてしまう
�掘グ緡典ヾ悗砲�ける情報リスク
１）医療機関を取り巻く社会情勢
・高度情報化社会
・ユビキタス社会（サイバースペース）の誕生
・情報の収集、分析、利用、加工、管理が容易
↓
・各機関や各部署、各医師や看護婦等が保有している情報の把握、管理が困難
・（匿名による）表現の爆発、クレーマー、内部告発（ネット告発）の出現
ex「ブラックでんリスト」http://www.denternet.jp/link.htm?mod2=blkden
・個人情報（プライバシー）、営業秘密等の流出の危険性増大
ex診療情報などセンシティブ情報（機微情報）も含まれている
↓
・ 情報管理の徹底が必要 「蟻の穴から堤も崩れる」（韓非子）
・ クライシス・コミュニケーション（危機管理）が必要 ex.雪印、不二家
２）各種の情報リスクとその対策
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１）個人情報を巡る状況
２）適用法令・ガイドライン
私立病院は個人情報保護法、国立がんセンターなどの国立病院は行政機関個人情報保護法、国立大学病院は独立行政法人等個人情報保護法、自治体では個人情報保護条例が適用される。
・医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイドライン（平成18年4月21日厚生労働省）
３）最近の医療機関における情報漏洩事件
(1)本年１月１５日報道 千葉大医学部附属病院
患者４１７名分の氏名や診療情報を含むメールが医師によって第三者へメール送信してしまった事案。心臓検査を受けた患者の氏名、性別、年齢、治療内容などが含まれていたという。同医師は自分宛にメールを送付するつもりだったが、メールアドレスを間違え、第三者に送ってしまったという。同院では、研究目的で診療情報を用いる場合、匿名化を指導していたが徹底されていなかった。同院では、教育などにより再発を防止したいとしている。
(2)本年１月１８日報道 東京大学医学部附属病院
患者情報がファイル交換ソフト経由で外部へ流出していたことが判明した事案。情報が流出したものは、同院ほか首都圏内の複数病院における患者の病歴ファイルで、氏名や生年月日、病状など約１５０件の個人情報を含まれていたという。同院では、個人情報の持ち出しや自宅におけるファイル交換ソフトの利用も禁止しており、同院医師も知っていたが、守られていなかったという。
(3)本年１月２２日報道 国立精神・神経センター
同職員が帰宅する際、山手線内の網棚に鞄を置き忘れ、患者情報を含むパソコンを通勤途中に紛失したという事案。患者の氏名や住所、生年月日、診療科など１１６８件の個人情報が含まれていた。同センターでは、持ち出しの際に管理者の許可や、本体、ファイルに対するパスワードの設定などを指示していたが、今回紛失したパソコンには対応していなかったという。同センターは、患者に対する謝罪と事情説明を実施しており、また、職員に対して厳重注意を実施したという。
(4)本年２月２日報道 国立循環器病センター
同センター職員所有の鞄が院内で盗まれ、患者の個人情報が保存されたノートパソコンも盗難されたという事案。氏名や生年月日、入退院日時など約１１００人分の情報が入っており、検査を実施した患者については検査結果や治療内容なども保存されていた。同センターでは、匿名化していない患者情報の持ち出しを禁止していたが、守られていなかったという。
(5)本年２月２１日報道 東北大学病院
病院内において、患者の個人情報を記録したUSBメモリを紛失した事例。紛失したＵＳＢメモリには、氏名や病名など患者情報２０２４件が保存されていたという。データは医師や看護士が研究目的に利用していたという。同院では関連する患者や家族に対して事情を説明して謝罪し、警察へ被害届を提出したという。
(6)本年３月１２日報道 鳥取大学医学部附属病院
患者１０５名分の氏名や診療情報などが記録されたＵＳＢメモリを紛失したという事案。紛失したＵＳＢメモリには、氏名や患者番号をはじめ、指導日、薬剤名、指導状況など患者１０５名分の個人情報が含まれていたという。同院では、該当する患者に対し書面で説明と謝罪を実施し、さらに、再発防止策に取り組むという。
(7)本年４月４日報道 兵庫県立成人病センター
研修医の執務室となっている医局において、パソコン７台とＵＳＢメモリ６個などが盗難事件されたという事案。パソコンなどには、患者６６１名分の手術記録、画像記録、診療記録などが保存されていたという。同センターでは、該当する患者に対し謝罪状を送付したとしている。
（以上、出典Security NEXT 「個人情報漏洩事件一覧」
http://www.security-next.com/cat_cat25.html）
�后ケ超犯詭�を巡る問題
１）営業秘密の定義
「秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないものをいう」（不正競争防止法２条６項）
(1)秘密として管理されていること（秘密管理性）
(2)事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であること（有用性）
(3)公然と知られていないこと（非公知性）
２）営業秘密管理指針（経済産業省） 平成15年1月30日制定、平成17年10月12日改訂
これまでの裁判例においては、営業秘密が不正競争防止法上の保護を受けるために必要な秘密管理性に関し、事業者が主観的に営業秘密と考えているだけでは足りず、下記２要件を必要としている。
３）物理的・技術的管理の必要性
(1)情報の区分と表示
秘密情報は、その他の情報と区分して管理することが必要である。秘密情報については、秘密性のレベルを決め、それに応じた管理を行うことが望ましい。
営業秘密であること及び秘密性の区分を、権限を持ってアクセスした者が客観的に認識可能な状態（マル秘マーク等）にすること、自社の営業秘密に他者の営業秘密が混入（コンタミネーション）しないようにすることが重要である。
(2)アクセス権者の特定
誰がどの営業秘密にアクセスできるかをあらかじめ特定する。その際には、営業秘密へのアクセス記録を残すことにより、管理の実効性が増す。
(3)媒体の保管、持ち出し制限と廃棄
情報を媒体に記録した場合は、施錠可能な保管庫に、施錠して保管する必要がある。また、持ち出し制限を行うとともに、媒体の廃棄の際には、焼却やシュレッダーによる処理、溶解、破壊等の措置を講ずることが重要である。
(4)施設等の管理（建物・事務所・研究室等のセキュリティ配慮・警備）
営業秘密の保管場所の施錠や、保管されている施設への入退出を制限する。
�此グ緡典ヾ悗砲�ける情報管理
１）医療機関における関係図
２）秘密管理に関する周知徹底
「教育・研修の実施」に関して秘密管理性を認めた裁判例
○新規採用社員に対して、原告が保管する営業資料について、営業活動以外への使用の禁止を徹底指導していた例（東京地裁平成12年11月13日）
○従業者に対し、会社の業務上の秘密を他に漏らさないことを義務づけ、新入社員の入社時にもその旨指導するなどしていた例（東京地裁平成16年5月14日）
○派遣スタッフや派遣先事業所の情報の重要性やこれらを漏洩してはならないことを、研修等を通じて従業者に周知させていた例（東京地裁平成15年11月13日）
○従業者に対し、毎朝行っている朝礼において、随時、新聞等に掲載された営業秘密に関する事件を紹介するなどの教育を行っていた例（東京地裁平成17年6月27日）
３）共同研究・共同開発の場合
(1)可能な限り、営業秘密の特定を行う。
(2)口頭にて情報提供を受けた場合でも、事後に文書にて営業秘密か否かの確認を行う。
(3)大学や研究機関の共同開発においては、複数社が研究に加わっている場合もあるので注意が必要。
�察ヂ山嫁綵�額に関する裁判例
(1)早稲田大学講演会名簿事件（最高裁平成15年9月12日、判時1837号3頁）
「個人情報についても、本人が、自己が欲しない他者にはみだりにこれを開示させたくないと考えることは自然なことであり、そのことへの期待は保護されるべきものであるから、本件個人情報は、上告人らのプライバシーに係る情報として法的保護の対象となる」なお、差し戻し後の東京高裁（平成16年3月23日）は、一人につき、5,000円の慰謝料を認定。
(2)ＮＴＴ電話帳事件（東京地裁平成10年1月21日、判タ1008号187頁）
幼い娘と二人暮らしであった女性が、転居に伴って電話帳への氏名、電話番号、住所を記載しないよう求めていたにもかかわらず、電話帳に掲載されてしまった事例。原告が嫌がらせ電話などで悩んでいた経験を有していたこと等も勘案し、10万円の慰謝料を認定。
(3)診療所名等アップロード事件（神戸地裁平成11年6月23日、判時1700号99頁）
パソコン通信の電子掲示板（ＢＢＳ）に、無断で氏名、職業、診療所の住所、電話番号を掲載されてしまったため、悪戯電話が頻繁にかかるようになり、精神的損害を被った事例。裁判所は、20万円の慰謝料と治療費を認めた。
(4)元取締役情報漏洩事件（東京地裁平成11年2月15日、判時1675号107頁）
生命保険会社の元常務取締役が週刊誌の取材に対し、社外秘にあたる情報及び資料を提供し、会社が守秘義務違反等による名誉、信用毀損に基づく損害賠償請求を行った事案につき、裁判所は、守秘義務違反を認定し、約2億5500万円の損害賠償請求を認めた。
(5)ヤフーＢＢ事件（大阪地裁平成18年5月19日、判時1948号122頁）
業務委託先から派遣され、データベースのメンテナンスを行っていた者がリモートメンテナンスサーバーにログオンした上で、本件顧客データベースにアクセスし、顧客情報を外部に転送し、それが恐喝の実行犯に渡ったという事件につき、裁判所は、退職後に悪用されないようにユーザー名の削除又はパスワードの変更をすべきであったとして、１人当たり、6000円の賠償を認めた。
(6)エステティックサロン事件（東京地裁平成19年2月8日）
同社がウェブサーバの設定を誤り、サーバ上に保存されていたアンケートが第三者によって閲覧できる状況となったもので、約５万人分のアンケートが流出し、さらにファイル交換ソフト上などでデータが流通し、被害が拡大したもの。漏洩したデータには住所、氏名、メールアドレスの他、アンケートへの回答など身体的特徴といったセンシティブ情報が含まれており、その後、いたずら電話やダイレクトメール、ウイルスの送付といった二次被害が発生したという。原告１４名のうち、１３名に１人あたり３万5000円、１名に対し２万2000円の賠償義務を認めた。
�次ゾ霾鶸浜�の留意点
１）コンタミネーション（情報の混入）の防止
(1)管理方針等（基本方針、基準、規程等）の整備
外部との打ち合わせにおいては、議事録を作成し、双方の署名を行っておく。
(2)責任者の存在とその権限の明確化
(3)営業秘密侵害を防止するための教育及び管理方針等の周知・徹底
特に、私物のノートパソコンによる流出事例が多い。
Winnyなどのファイル交換ソフトの利用は、著作権侵害となる可能性が高いことも認識しておくべき。
(4)日常的なモニタリングの実施
（参考裁判例）東京地裁平成１３年１２月３日
「従業員が社内ネットワークシステムを用いて電子メールを私的に使用する場合に期待し得るプライバシーの保護の範囲は、、、相当程度低減されることを甘受すべきであり、、、社会通念上相当な範囲を逸脱した監視がなされた場合に限り、プライバシー権の侵害となる」
(5)内部監査の実施
(6)事後対応体制の整備
（参考）平成１８年４月１日より、公益通報者保護法が施行
いわゆる内部告発を積極的に受け入れ、早期に是正していくための体制を作ることが望ましい。
２）現従業者に関する秘密管理規程等の整備
就業規則において秘密保持の規定を設ける場合には、労働関連法規に反しないよう留意する必要がある。例えば、就業規則において、営業秘密を不正に取得及び使用又は開示した従業者に対する懲罰規定を新たに制定し、又はその内容を変更する場合には、労働基準法の規定に従い、使用者は労働組合又は労働者の過半数を代表する者の意見を聴き、その変更を労働基準監督署に届け出る必要がある（労働基準法第89条及び第90条）。
また、作成された就業規則が民事的な効力を有するためには、事業場の労働者に対して周知されていること等も必要である。
３）新入社員及び退職者に対する秘密保持誓約書
イ）新入社員（転入者）の場合
・他社の営業秘密の取得及び使用又は開示を目的とした採用活動の禁止
・新入社員に関する秘密保持誓約書
・採用後の配置、業務内容のチェック
ロ）退職者の場合
・「労働者が雇用関係中に知りえた業務上の秘密を不当に利用してはならないという義務は、不正競争防止法の規定及びその趣旨並びに信義則の観点からしても、雇用関係の終了後にも残存するといえよう」（仙台地裁平成７年１２月２２日）
・ターミナル・インタビュー（退職時面接）
・個人所有のパソコン内のデータ削除、破棄証明
・退職者に対する秘密保持誓約書
４）情報管理態勢の確立
・プライバシーマーク制度
http://privacymark.jp/
・ＩＳＭＳ認証（情報セキュリティマネジメントシステム適合性評価制度）
http://www.isms.jipdec.jp/
・医療情報システムの安全管理に関するガイドライン（平成17年3月31日厚生労働省）
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2005/03/s0331-8.html
［参考文献］
・個人情報実務六法（2007年版）民事法研究会 3,800円
松本恒雄・木下智史・木村哲也・小松陽一郎・近藤剛史・島川勝編
