欧米では、昔から、弁護士、医者、聖職者は、プロフェッショナル(professional)と呼ばれており、高度な知識や技術は言うまでもなく、高い職業倫理と公正な態度が求められておりますが、それは、ともに人の不幸と対面する職業だからだと言われております。人は、不運・不幸という人生の重大な局面において、決してぞんざいに扱われてはならないと思うのです。
ハーバード大学のチャールズ・ウィリアム・エリオット博士(1834-1926)は、総長を辞する際、「自分のことをあまり考えすぎるな。他人のことを配慮することが習慣的に行える人間になってほしい。そして、正しいと思ったことを、勇気を持ってやる人間になってほしい」という言葉を学生に贈ったと言われています。
また、地域医療のモデルともなっている諏訪中央病院の院長である鎌田實医師によると、「良医」の条件は、(1)話をよく聞いてくれる、(2)わかりやすい言葉でわかりやすく説明してくれる、(3)薬や検査よりも、生活指導を重視する、(4)必要な時は専門医を紹介してくれる、(5)患者の家族の気持ちまで考えてくれる、(6)患者が住む地域の医療や福祉をよく知っている、(7)医療の限界を知っている、(8)患者の痛みやつらさ、悲しみを理解し、共感してくれる、(9)他の医師の意見を聞きたいという患者の希望に快く応じてくれる、(10)ショックを与えずに真実を患者に伝えられることの10個であると言われています。
弁護士という職業においても、依頼者(クライアント)の悩みや相談に対し、できるだけ先入観を抱かず虚心坦懐に相談内容をよく聞き、大局的見地から依頼者の置かれている地位や立場について考え、あらゆる専門知識や法律論を駆使し、場合によっては他の専門家のアドバイスを求めながら、懇切丁寧に今後の解決方法等についてわかりやすく説明し、正義・公平に反することがないかどうかについても留意しながら、誠実に行動していく、そういう姿勢、心構えが必要なのではないかと考えています。また、弁護士と依頼者の関係においては、時間をかけて信頼関係を大切に築いていくことも重要ではないかとも考えています。
室町前期の能作者世阿弥(1363頃-1443頃)は、「ただ、返す返す、初心を忘るべからず」という言葉を残しておりますが、正直者が馬鹿を見る世の中であってはならないと考え、また、人や世の中のために役立ちたいと希望し、司法試験受験を決意した初心を忘れず、若き血と職業倫理を固持しながら、「熱く、温かく」をモットーにして、日常業務を行っていきたいと考えております。