近藤総合法律事務所
不正競争防止法
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不正競争防止法
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1不正競争防止法平成15年改正のポイント

 1)営業秘密に関する刑事責任の導入

a)「不正の競争の目的」という主観要件が入っている。

(4号の「前号の使用又は開示の用に供する目的で」というのは「不正の目的」と同義)

「不正の競争の目的」とは、他人の成果を冒用する場合、特定の競業者と共謀して他人の営業秘密を公開する場合。自己又は第3者を競争上優位に立たせることを意図する点で、単に他人をおとしめる加害目的とは区別される。

インターネットや新聞を通じて不特定多数の人に公開するだけでは、不正の競争の目的があるとは言えない。

b)いずれも親告罪である(14条2項)

営業秘密が裁判手続きを通じて漏れる場合もあるので、検察が暴走しないようにという産業界の要望が強かった為

c)刑法のその他の規定とは、一般・特別の関係に立たない

(14条3項)

(刑法その他の罰則の適用を妨げない)

詐欺的行為によって営業秘密を取得した場合には、詐欺罪を適用できる。

d)両罰規定の対象からはずす(15条が両罰規定であるが、営業秘密の場合には会社は被害者であるので、今回新設いした14条1項3号から6号の罪に関しては両罰規定の対象からはずした)

e)転職先で営業秘密を開示された先の企業に関しては、6号の主体(役員・従業者)ではない。

従って、刑法の共犯(教唆等)に該当しない限り、6号には該当しない。



 2)民事責任の強化
 a)損害賠償額の推定

第5条「その譲渡した物の数量に、被侵害者がその侵害の行為がなければ販売することのできた物の数量に、被侵害者がその侵害の行為がなければ販売することができた物の単位数量当たりの利益の額を(中略)被害者が受けた損害の額とすることができる」として、逸失利益の算定式に関する条文を置いた。

他人の商品等表示を使用した商品の譲渡、他人の商品の形態を模倣した商品の譲渡等の類型には妥当するが、同じ営業秘密でも、顧客リストの流出の場合などにはこの算定方式は妥当しない。

  b)その他の訴訟上の規定
第6条 書類の提出
インカメラ方式も明記
第6条の2 損害計算の為の鑑定
第6条の3 相当な損害額の認定

 3)ITネットワーク化への対応

第2条 「輸入し、もしくは電気通信回線を通じて提供して、・・」という部分を追加

譲渡・引渡という類型に留まらない営業秘密の漏洩(メールでの送付等)にも対応できることを明確化した



4)内部告発・報道の自由との関係
a) 営業秘密概念

企業の環境汚染等に関する情報は、営業秘密とは言えない

違法行為に関しては、公序良俗に反するとして、それがいかに企業にとって重要な情報であっても民事上の営業秘密としては保護されない

b)「不正の目的」

「不正の目的」がなければ処罰はされない

義憤にかられて公表することは「不正の目的」では無い

c)正当業務行為

刑法35条(正当行為)として、内部告発や報道は保護される


一言メッセージ

 「胸像を十日でつくり上げられるようになるまでに、私が30年間修行を積んできたということを」(ミケランジェロ)

 秘伝の技やノウハウは、企業が長年の汗と努力によって作り上げられてきたものであり、安易に他人に真似されることがないよう厳重に管理するとともに、法的な保護が不可欠であると言えます。


著書紹介
デジタルコンテンツ法上巻 line デジタルコンテンツ法下巻



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