近藤 剛史

2021年01月13日

「発信者情報開示の在り方に関する研究会 最終とりまとめ」の公表

 インターネット上の匿名の発信者による投稿に関して被害を受けた者は、被害回復のため、プロバイダ責任制限法における発信者情報開示請求により発信者を特定し、損害賠償請求等を行うことが考えられるが、現在の発信者情報開示制度に関して様々な課題が指摘されており、円滑な被害者救済が図られないという声がある一方で、例えば、企業等が SNS などで行われた自社に批判的な投稿に対して開示要件を充たさないことを知りながら発信者情報開示請求を行うなど、いわば発信者情報開示制度の悪用とも考えられるケースがみられるようになっているとの声もあり、プロバイダ責任制限法における発信者情報開示の在り方について「発信者情報開示の在り方に関する研究会」にて検討が行われ、令和2年12月「発信者情報開示の在り方に関する研究会 最終とりまとめ」が公表された。
 その報告書では、「新たな裁判手続の創設及び特定の通信ログの早期保全」のための方策として、発信者の権利利益の確保に十分配慮しつつ、迅速かつ円滑な被害者の権利回復が適切に図られるようにするという目的を実現するために、現行法上の開示請求権を存置し、これに加えて非訟手続を新たに設けることを前提として、アクセスプロバイダを早期に特定し、権利侵害に関係する特定の通信ログ及び発信者の住所・氏名等を迅速に保全するとともに、開示可否について1つの手続の中で判断可能とするような非訟手続を創設することが適当であるとしている。
 実際に迅速かつ適切な被害者救済が行われるためには、法的手続の代理人となる弁護士の知見・力量のみならず、裁判所における人的・物的組織の充実、法律扶助(法テラス)の拡充、ITスキルの向上など課題が山積している。

「発信者情報開示の在り方に関する研究会 最終とりまとめ」(令和2年12月)
https://www.soumu.go.jp/main_content/000724725.pdf

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2021年01月12日

コーポレートガバナンス・オブ・ザ・イヤー 2020

 日本取締役協会は、2021年1月7日、コーポレートガバナンス・オブ・ザ・イヤー 2020を発表しました。その審査のポイントは、社外取締役の員数、業績指標、時価総額などのほか、ガバナンス体制整備の指標を加点要件として、パフォーマンス評価として、みさき投資による経営指標分析を活用し、Winner Company 3社を選出した上で、審査委員によるトップマネジメントへのインタビュー調査を行い、Grand Prize Company 1社を決定したとしています。
 そのGrand Prize Company に選出されたキリンホールディングス株式会社について、審査委員長 斉藤惇氏(日本野球機構会長・プロ野球組織コミッショナー)は、「社長自らマイケル・ポーター教授に会い、彼の唱えるCSV、即ち積極的社会貢献を実践することによって企業の成長と財務的価値を拡大するというテーマに先頭に立って取り組んでいる。当社のコア技術である発酵バイオテクノロジーをベースとして(ヘルスサイエンス)、社会が求める価値を創造することによって社会に貢献するという企業目的を明確にし、その実践に当たって多様性に富んだスキルの高い外部人材を経営に招き、透明性の高いガバナンス体制を構築している」と述べています。

コーポレートガバナンス・オブ・ザ・イヤー®2020 受賞企業発表 - 日本取締役協会
日本取締役協会は、企業表彰コーポレートガバナンス・オブ・ザ・イヤーの2020年度...
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2020年12月28日

年末年始営業のお知らせ

誠に勝手ながら、令和2年12月29日(火)~令和3年1月5日(火)は休業 とさせていただきます。

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2020年12月21日

最近のサイバー攻撃の状況を踏まえた経営者への注意喚起

 最近のEmotet(エモテット)と呼ばれるウイルスへの感染を誘導する高度化した攻撃メール(実在の相手の氏名、メールアドレス、メールの内容等の一部を流用して正規のメールへの返信を装っていたり、業務上開封してしまいそうな巧妙な文面となっているものが多い)が増えている状況を踏まえ、、2020年12月18日、経済産業省商務情報政策局サイバーセキュリティ課より「最近のサイバー攻撃の状況を踏まえた経営者への注意喚起」が発出されています。
 具体的には、下記項目のチェックが要求されています。

① 攻撃は格段に高度化し、被害の形態も様々な関係者を巻き込む複雑なものになり、技術的な対策だけではなく関係者との調整や事業継続等の判断が必要に。改めて経営者がリーダーシップを。
② ランサムウェア攻撃による被害への対応は企業の信頼に直結。経営者でなければ判断できない問題。
③ 海外拠点とのシステム統合を進める際、サイバーセキュリティを踏まえたグローバルガバナンスの確立を。
④ 基本行動指針(高密度な情報共有、機微技術情報の流出懸念時の報告、適切な場合の公表)の徹底を。

https://www.meti.go.jp/press/2020/12/20201218008/20201218008-1.pdf

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2020年12月13日

中小企業庁の知的財産取引に関する調査・検討

 令和2年11月26日、中小企業庁の知的財産取引検討会(第5回)が開催され、知的財産取引に係るガイドライン(案)及び各種契約書のひな形(秘密保持契約書、共同開発契約書、開発委託契約書及び製造委託契約書)等の資料が公表されている。大企業と中小企業との間の立場・力関係などから、未だに不適切な取引慣行(例えば、一方的条件に基づいた契約の締結、知的財産権移転の強要、ノウハウ等の開示の強要等)が存在しているとの認識のもと、かかる慣行を解消することを目指し、調査・検討等がなされている。

知的財産取引検討会(第5回) 配布資料
https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/kenkyukai/chizaitorihiki/201126chizaitorihiki.html

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2020年08月03日

暑中お見舞い申し上げます。

 

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2020年07月28日

ツイッター上のリツイート責任(最高裁令和2年7月21日判決)

 ある写真家が撮影したスズランの写真(ウェブサイト上の画像)に関するツイッター上のリツイート行為に関し、最高裁は、令和2年7月21日、下記のように一般ユーザーにとってかなり厳しいと思える判断を示した(平成30年(受)第1412号 発信者情報開示請求事件)。
 「ツイッター上の各アカウントにおいて,ツイートのリツイート(第三者のツイートを紹介ないし引用する,ツイッター上の再投稿)がされ, これにより,不特定の者が閲覧できる本件各アカウントの各タイムライン(個々のツイートが時系列順に表示されるページ)に,それぞれ「本件各表示画像」が本件各リツイート記事の一部として表示されるようになった。本件各表示画像は,本件元画像の上部及び下部がトリミング(一部切除)された形となっており,そのため,本件氏名表示部分が表示されなくなっている。」「ツイッターのシステムにおいては,リンク先の画像の表示の仕方に関するHTML等の指定により,リンク先の元の画像とは縦横の大きさが異なる画像やトリミングされた画像が表示されることがあるところ,本件においても,これにより,本件各表示画像は,トリミングされた形で上記端末の画面上に表示され,本件氏名表示部分が表示されなくなったものである。」「本件各リツイート記事中の本件各表示画像をクリックすれば,本件氏名表示部分がある本件元画像を見ることができるとしても,本件各表示画像が表示されているウェブページとは別個のウェブページに本件氏名表示部分があるというにとどまり,本件各ウェブページを閲覧するユーザーは,本件各表示画像をクリックしない限り,著作者名の表示を目にすることはない。また,同ユーザーが本件各表示画像を通常クリックするといえるような事情もうかがわれない。そうすると,本件各リツイート記事中の本件各表示画像をクリックすれば,本件氏名表示部分がある本件元画像を見ることができるということをもって,本件各リツイート者が著作者名を表示したことになるものではないというべきである。」「以上によれば,本件各リツイートによる本件氏名表示権の侵害について,本件各リツイート者は,プロバイダ責任制限法4条1項の「侵害情報の発信者」に該当し,かつ,同項1号の「侵害情報の流通によって」被上告人の権利を侵害したものというべきである。」

 つまり、著作権法第19条に規定する氏名表示権を侵害したかどうかにつき、ツイッター社のシステム・仕様にかかわらず、そのリツイート行為者の単純な操作行為が氏名表示権の侵害となり、その画面表示結果として権利侵害が認められる以上、ツイッター社は、プロバイダ責任制限法に基づき、そのリツイートを行った情報発信者に関する氏名、住所等を開示する責任があると判断したものである。

 

<参照条文>
著作権法第19条(氏名表示権)
 著作者は、その著作物の原作品に、又はその著作物の公衆への提供若しくは提示に際し、その実名若しくは変名を著作者名として表示し、又は著作者名を表示しないこととする権利を有する。その著作物を原著作物とする二次的著作物の公衆への提供又は提示に際しての原著作物の著作者名の表示についても、同様とする。
2 著作物を利用する者は、その著作者の別段の意思表示がない限り、その著作物につきすでに著作者が表示しているところに従つて著作者名を表示することができる。
3 著作者名の表示は、著作物の利用の目的及び態様に照らし著作者が創作者であることを主張する利益を害するおそれがないと認められるときは、公正な慣行に反しない限り、省略することができる。

 

 なお,林景一裁判官による「私は,多数意見と異なり,本件各リツイート者が本件各リツイートによって本件氏名表示権を侵害したとはいえず,原判決のうち本件各リツイート者に係る発信者情報開示請求を認容した部分を破棄すべきであると考える。」「本件各リツイート者は,著作者人格権侵害をした主体であるとは評価することができないと考える。」という(いわば最高裁法理である規範的責任論(カラオケ法理)の応用論とも思える)反対意見が付されており、外形的・形式的な行為を行ったに過ぎないリツイート者の法的責任を厳しく問うべきではないとした価値判断は考慮に値する。

 

 ただ、ツイッター上のリツイート行為に関しては、元大阪府知事がジャーナリストによって他人による名誉毀損記事につきリツイートを行ったことの法的責任を求めた事件につき、「投稿内容に含まれる表現が人の客観的評価を低下させるかについて、相応の慎重さが求められる」としてその損害賠償責任を認めた大阪高裁判決(令和2年6月23日)もあり、(簡単、手軽に行えてしまう行為であるものの)いわば厳しい情報拡散責任が認められていると言えるものであり、今後、安易・軽率なリツイートについては十分な注意が必要であると言える。

Category: Author: 近藤 剛史

2020年07月07日

離婚の際に考慮すべき3つのポイント

 こんにちは、弁護士の前田です。

 この度、事務所内ブログにおいて、執筆を始めさせていただくことになりました。ご覧くださる皆様にとって、少しでも有益な情報を発信できればよいなと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 さて、今回は、離婚の際に考慮すべき3つのポイントをお伝えいたします。

 離婚の際には様々な事柄が問題となりますが、主なものとして、①親権や面会交流等、未成年の子どもに関すること②養育費、婚姻費用に関すること③財産分与、慰謝料に関することの3つが挙げられます。

 

1.親権や面会交流等、未成年の子どもに関することについて

 親権については、父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならないと法律で規定されています(民法819条1項)。

 そして、夫婦間で、どちらを親権者とするかについて争いがあり、協議により親権者を定めることができない場合には、調停などの場で定めることになります。

 また、未成年の子どもに関して、面会交流についても度々問題となります。

 面会交流とは、離婚後又は別居中に、子どもを養育監護していない方の親が、子どもと面会等を行うことをいいます。

 面会交流には、監護親の協力が必要となるため、夫婦間の協議により自主的に実現することが望ましいのですが、自主的に実現しない場合には、家庭裁判所に対し、面会交流に関する家事調停や家事審判を申し立てることができます。

 

2.養育費、婚姻費用について

 養育費については、「子の監護に要する費用」として民法766条1項が夫婦の分担を定め、婚姻費用については、「婚姻から生ずる費用」として民法760条が父母の分担を定めています。

 そして、養育費及び婚姻費用は、いずれも「生活保持義務」、すなわち、自分の生活を保持するのと同程度の生活を被扶養者にも保持させる義務だと解されています。

 これらの金額について、夫婦間で合意ができない場合には、調停を申し立てるなどの方法をとることになります。

 養育費や婚姻費用を算定する際に基準となるのが、家庭裁判所の手続の中で使われている簡易算定表です。子どもの数、年齢構成ごとにまとめられた表を選択して、養育費を支払う義務のある親と、支払を受ける親の年収を当てはめることにより、相当な養育費や婚姻費用の額がわかるようになっています。

 算定表は、令和元年12月23日に更新版が公表され、現在はこちらの表(https://www.courts.go.jp/toukei_siryou/siryo/H30shihou_houkoku/index.html)が使用されています。

 

3.財産分与、慰謝料について

 離婚に伴う財産分与とは、夫婦が婚姻期間中に協力して形成した財産を離婚に際して分与することをいいます(民法768条、771条)。

 財産分与は、夫婦財産の清算としての性格の他に、離婚後の扶養としての性格、精神的苦痛に対する慰謝料としての性格を有しています。

 そして、離婚に伴う慰謝料とは、離婚によって精神的苦痛を被った者に対してなす金銭的賠償のことをいいます(民法710条)。

 先に述べたように、財産分与には慰謝料的性格もありますが、財産分与と慰謝料を別々に取り決めたり、請求することもできるとされています。

 財産分与及び慰謝料は、離婚時において重要な財産的取り決めであり、金額について当事者間で合意ができない場合には、調停を申し立てるなどの方法をとることになります。

 

 このように、離婚に際しては大きく分けて上記の3つが問題となり、それぞれについて考慮する必要があります。

 今後は、これらの問題について更に掘り下げてお伝えしていこうと思います。

 

 弊所では離婚や男女問題についてのご相談も受け付けておりますので、お悩みの方は、是非お気軽にご相談ください。

 

Category: Author: 前田彩

2020年06月30日

ツイッター上の逮捕歴に関する記事の削除請求事件(東京高裁)

 2012年に建造物侵入罪の容疑で逮捕され、罰金の略式命令を受けた事件に関し、実名で報じた複数の記事がリツイートされ、就職活動や交遊関係に支障が出たと訴えていた事件において、東京地裁は、ツイッターの検索機能について「投稿日時の順に表示しているにすぎない。グーグルなどと違い、表現行為の側面は認められない」と指摘。その上で「利用者は多いものの、ウェブサイトの一つにすぎない。情報流通の基盤とまではいえない」として投稿の削除を命じていたが、その控訴審である東京高裁は、2020年6月29日、公表の利益と比べてプライバシーの保護が「明らかに優越するとはいえない」と認定し、ツイッター上の記事の削除を認めなかった。
 これまでの裁判例では、第1審(地裁)においてはプライバシー保護(公表されない利益)の観点等より、ネット上の記事や検索結果の削除要求が認められる事案はあるものの、上級審では厳しい判断がなされる傾向にあると言えそうである。一般ユーザーの利便性(情報の自由流通)や表現の自由が極めて重要であることは言うまでもないが、記事を書かれた側は1個人の利益と過小評価されてしまう危険性があり、より緻密なネット調査や事案分析が必要であると言えそうである。

<参考判例>
・平成29年1月31日最高裁判決
 「検索事業者が,ある者に関する条件による検索の求めに応じ,その者のプライバシーに属する事実を含む記事等が掲載されたウェブサイトのURL等情報を検索結果の一部として提供する行為が違法となるか否かは,当該事実の性質及び内容,当該URL等情報が提供されることによってその者のプライバシーに属する事実が伝達される範囲とその者が被る具体的被害の程度,その者の社会的地位や影響力,上記記事等の目的や意義,上記記事等が掲載された時の社会的状況とその後の変化,上記記事等において当該事実を記載する必要性など,当該事実を公表されない法的利益と当該URL等情報を検索結果として提供する理由に関する諸事情を比較衡量して判断すべきもので,その結果,当該事実を公表されない法的利益が優越することが明らかな場合には,検索事業者に対し,当該URL等情報を検索結果から削除することを求めることができるものと解するのが相当である。」 「児童買春をしたとの被疑事実に基づき逮捕されたという本件事実は,他人にみだりに知られたくない抗告人のプライバシーに属する事実であるものではあるが,児童買春が児童に対する性的搾取及び性的虐待と位置付けられており,社会的に強い非難の対象とされ,罰則をもって禁止されていることに照らし,今なお公共の利害に関する事項であるといえる。また,本件検索結果は抗告人の居住する県の名称及び抗告人の氏名を条件とした場合の検索結果の一部であることなどからすると,本件事実が伝達される範囲はある程度限られたものであるといえる。以上の諸事情に照らすと,抗告人が妻子と共に生活し,前記1(1)の罰金刑に処せられた後は一定期間犯罪を犯すことなく民間企業で稼働していることがうかがわれることなどの事情を考慮しても,本件事実を公表されない法的利益が優越することが明らかであるとはいえない。」

・令和元年12月12日札幌地裁判決
 「原告は、強姦の被疑事実(本件被疑事実)で逮捕(本件逮捕)されているところ、、、その書き込みがされた当時においては、本件事実は、社会における正当な関心事として、公共の利害に関する事項であったということができる。」
 「その一方、原告は、本件被疑事件について、平成24年〇〇〇〇に嫌疑不十分を理由として不起訴処分となり、釈放された後一度も取調べを受けることがないまま、7年以上が経過しているのであって、このような本件被疑事件の捜査経過に鑑みれば、原告が真実本件被疑事実に係る行為を行ったと認めるに足りる十分な証拠があるとは到底考え難いし、公訴時効は完成していないものの(刑事訴訟法250条2項3号)、今後本件被疑事件について起訴がされる現実的な可能性は既に事実上なくなっているということができる。そうすると、ある被疑事実について、刑事裁判手続が進行している場合や有罪判決がされた場合と比して、本件事実を公衆に知らせたとしても、公共の利益増進のために批判や評価がされる可能性は小さく、社会における正当な関心事として、これを公表する社会的意義は乏しくなっているということができる。」
 「本件被疑事実について、嫌疑不十分で釈放されてから7年以上を経過した現在においても、本件被疑事実を行ったという有罪の嫌疑を身近な人々に抱かれたまま、日常生活を送ることとなっているのであり、本件被疑事実について嫌疑不十分を理由に不起訴処分となり、裁判を受けることもなかった原告にとって、本件検索結果が表示されることの私生活上の現実的な不利益は大きいということができる。」
 「平成29年最決を参照しても、平成29年最決と事案の異なる本件において、URL等情報の検索結果の削除が認められるかについて、一義的な判断ができるわけではない。」「被告が、原告の訴外における本件検索結果の削除を求める要請に応じなかったとしても、不法行為になるということはできない。」

Category: Author: 近藤 剛史

2020年06月14日

リーチサイト対策とダウンロード違法化(令和2年著作権法改正)

 「著作権法及びプログラムの著作物に係る登録の特例に関する法律の一部を改正する法律案」が令和2年6月5日参議院において可決・成立し、令和3年1月1日(1.①及び2.①から③までは令和2年10月1日、2.⑥(ⅰ)は公布日 から1年を超えない範囲内で政令で定める日)から施行されることになりました。
 一般のインターネット利用者にとっては、令和3年1月1日から適用される1.②の「侵害コンテンツのダウンロード違法化」と、令和2年10月1日から適用される2.①「スクショにおける写り込み適法化」に注意が必要です。
            記
1.インターネット上の海賊版対策の強化
 ①リーチサイト対策
 ・リーチサイト(侵害コンテンツへのリンク情報等を集約したウェブサイト)等を運営する行為等を、刑事罰の対象とする。
 ・リーチサイト等において侵害コンテンツへのリンクを掲載する行為等を、著作権等を侵害する行為とみなし、民事上・刑事上の責任を問いうるようにする。
 ②侵害コンテンツのダウンロード違法化
 ・違法にアップロードされたものだと知りながら侵害コンテンツをダウンロードすることについて、一定の要件の下で私的使用目的であっても違法とし、正規版が有償で提供されているもののダウンロードを継続的に又は反復して行う場合には、刑事罰の対象にもする。
2.その他の改正事項
 ①写り込みに係る権利制限規定の対象範囲の拡大
 ・写り込みに係る権利制限規定について、生配信やスクリーンショットを対象に含めるなど 対象範囲の拡大を行う。
 ②行政手続に係る権利制限規定の整備(地理的表示法・種苗法関係)
 ・権利制限の対象となる行政手続として、現行法で対象とされている特許審査手続等に加え、種苗法・地理的表示(GI法)の審査等に関する手続を規定するとともに、これらに類する手続を政令で定めることができることとする。
 ③著作物を利用する権利に関する対抗制度の導入
 ・著作権者等から許諾を受けて著作物等を利用する権利について、その著作権等を譲り受けた者その他の第三者に対抗することができることとする。
 ④著作権侵害訴訟における証拠収集手続の強化
 ・裁判所は、書類の提出命令の要否を判断するために必要があると認めるときは、書類の所持者に当該書類の提示をさせることができることとするとともに、当事者の同意を得て、専門委員(技術専門家)に対し、当該書類を開示することができることとする。
 ⑤アクセスコントロールに関する保護の強化
 ・著作物等の不正使用を防止するためのアクセスコントロール技術について、最新の技術動向を踏まえて保護対象の明確化を行うとともに、これを回避する機能を有する不正なシリアルコード(ソフトウェアのライセンス認証等の際に入力する符号)の提供等を著作権等を侵害する行為とみなし、民事上・刑事上の責任を問いうるようにする。
 ⑥プログラムの著作物に係る登録制度の整備(プログラム登録特例法)
 (ⅰ)プログラムの著作物に関し、著作権者等の利害関係者が、自らの保有する著作物 と登録されている著作物が同一であることの証明を請求できることとする。
 (ⅱ)国又は独立行政法人が登録を行う場合の手数料の免除規定を廃止することとする。

Category: Author: 近藤 剛史
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